”A Normal Life , Just Like Walking”

小説書いて、メルマガ出して、文学フリマで売る。そんな同人作家皆原旬のブログ

既刊再掲

【既刊再掲】未恋たらたら【第三回】(終)

【既刊再掲】未恋たらたら【第三回】 「いらっしゃいませ」と招き入れてくれた瓦斯灯は長崎に有るのに東京みたいなきれいな言葉遣いするなあと良が思ってると、いっしょに来たかなえが、ジャケットを持ってきた。 「一応紳士の集う店ということにしてるから…

【既刊再掲】未恋たらたら【第二回】

【既刊再掲】未恋たらたら【第二回】 唐突で申し訳ないが、良は、素足フェチである。当人はクールにとらえているが、実際のところは、目線はあからさまに、素足を、白くて血色のいい女性の脚を求めている。 それもまっすぐで健康的なのが特に好きである。高…

【既刊再掲】未恋たらたら【第一回】

【既刊再掲】未恋たらたら【第一回】 8月の盆やすみ、長崎駅前のかたおかで高志とおれは皿うどんをつっついていた。 「なあ、これからどこいく?どんなとこでもええで」 高志が偉そうな口調で探りをいれて来たので 「高志、稲佐山に登ったことあるか?」 「…

【既刊再掲】「プログラマ探偵(PG.D)」【第5回】(終)

「プログラマ探偵(PG.D)」【第5回】 Day2【後編】 木崎は少し迷ってから、携帯に入れてある香奈恵の写真を来来に見せた。携帯の木崎香奈恵(きざきかなえ)を見て来来は思わず 「ああっ、そんなことってあるんだ」 といってから、うろたえ、もだ…

【既刊再掲】「プログラマ探偵(PG.D)」【第4回】

「プログラマ探偵(PG.D)」【第4回】 Day2【前編】 男は、ボトルコーヒーをコップに注ぐと、帰宅直後に立ち上げておいたノートパソコンを開いて起動パスワードを打ち込んだ。起動完了までの間に、郵便物を整理するのが木崎燐光(きざきりんこう)…

【既刊再掲】「プログラマ探偵(PG.D)」【第3回】

「プログラマ探偵(PG.D)」【第3回】 Day1【後編】 来来が堂々巡りをしている頃、 解解は風呂場から部屋の様子をうかがっている。 風呂場に着替えを持ち込んでいないのに、 来来が居座っているからだ。 解解は迷っていた。 風呂上がりの裸で無防備…

【既刊再掲】「プログラマ探偵(PG.D)」【第2回】

「プログラマ探偵(PG.D)」【第2回】 Day1【中編】 「今日あったメールの誤送信てさ、なにげに放置したよね。で、同じ日に危ないメールの始末してたわけでしょ、なんかねえ陰謀のふいんきなわけ」 「ふんいき」 来来がつっこむのも意に介さず続け…

【既刊再掲】「プログラマ探偵(PG.D)」【第1回】

「プログラマ探偵(PG.D)」【第1回】 Day1【前編】 事務所の電話が鳴ったのは倫子がファンシーモンスターを切り伏せたと同時だった。 倫子(りんこ)は 「ちっ」 と思いながらも、一応仕事の時間なので電話をとる。 「はい、解解(げげ)です」 電…

2017-06-24 既刊再掲「最後の観客(Last Audience)」【第5回】(終)

「最後の観客(Last Audience)」【5回目】(終) フィアが何か二の句を告げようとしたそのとき、部屋のドアがノックされた。 「晩飯、用意したぞ一緒にどうだ、みんな待ってるぞ」 会長が来た。 「はい、行きます。でも、いいのですか行って」 「なんでだ、つ…

既刊再掲「最後の観客(Last Audience)」【第4回】

「最後の観客(Last Audience)」【4回目】 会長はあご髭をなでている。傘もささずに気難しそうな顔をしていた。ちょっと怖かったが、こっちに気づくと、にこっとしてみせる。出て行く前から想像してはいたが、辺りの木は燃えてしまっていた。この状況を見て…

既刊再掲「最後の観客(Last Audience)」【3回目】

「最後の観客(Last Audience)」【3回目】 何がなんだか、わからないままの俺に代わって、フィアをなだめたのは、ケン、レン、ラルーだった。といっても、フィアに泣いて抱きついただけだが。それで、我に返ったようだった。その後の温泉ときのこのフルコー…

既刊再掲「最後の観客(Last Audience)」【2回目】

「最後の観客(Last Audience)」【2回目】 見たところ盗賊どもは車を動かせずにいるので騒いでいるようだ。普通の人に乗れない車はとりあえずおいといて、俺は問答無用でガキどもを黙らせて、こっそりと山小屋へ戻った。戻ったが寝ているはずのフィアはいな…

既刊再掲「最後の観客(Last Audience)」【1回目】

「最後の観客(Last Audience)」【1回目】 昼寝の時間が来たのにガキの誰も寝ない。昼寝当番の昼寝は数少ない役得なのに。指さしのレンなどはおやつが少ないのは昼寝している間に俺が盗み食いしているだから見張るんだと息巻いている。誤解もいいところだ。…

既刊再掲「すこし FUSHIGI」【4回目】(終)

「すこし FUSHIGI」【4回目】(終) 理恵には簡単なことだった。薬を切らすのは規定違反だが、20世紀末の日本で、それも過疎がきびしい片田舎で見舞われる危険なんてない。先生はそういって笑っていたっけ。でも、ルールはルールだから、用が済んだ…

既刊再掲「すこし FUSHIGI」【3回目】

「すこし FUSHIGI」【3回目】 恵一の母は、自宅でまだ料理をしていた。祖母の「じいさんが好きだった鯛の蒸し物」のリクエストに応えるべく、近くの料理上手に料理をおそわっていた。昼に合わせて作っていたのでさすがに調理はほぼおわっていた。 「…

既刊再掲「すこし FUSHIGI」【2回目】

「すこし FUSHIGI」【2回目】 高知駅に着いたのは、朝7時45分をまわった所だった。天気は快晴、すでに、日差しが手の甲を刺すように照りつけている。肌には厳しいが、暑いといっても東京とはすごしやすさが違う。東京は熱気が体にまとわりつく感…

既刊再掲「すこし FUSHIGI」【1回目】

「すこし FUSHIGI」【1回目】 夜行の高速バス、東京八重洲発ー高知駅行き、消灯間際の車内で、男は眠っていた。その前どなりの席には、今し方初めて会ったばかりの少女も、眠っていた。 少女のバス代を青年が出したのは、本意ではなかった。が、夜行…